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第44話 走り書きの手紙

Penulis: 青砥尭杜
last update Terakhir Diperbarui: 2025-03-07 23:03:01

 翌日の早朝、カイトが宿泊する寝室を一通の封筒を手にした迎賓館の職員が訪れた。

「朝の早い時間に申し訳ございません。至急の封書と思われましたので、失礼を押してお届けにあがりました」

 寝間着のまま応じたカイトに対し、壮齢の落ち着いた男性職員は深々と頭を下げてから用件を続けて口にした。

「閣下へ宛てた封書の署名は、ダイキ卿となっております」

 男性職員の伝えた名前にカイトは目を丸くした。

「父さ……ダイキ卿からの手紙ですか。分かりました。ありがとうございます」

 一気に目が覚めたカイトは、男性職員への礼を添えながら薄い封筒を受け取った。

 深い会釈を残して男性職員が去ると、ドアを閉めて一度深呼吸をしたカイトは、ホテルの客室に近い造りとなっている寝室に備え付けられた小振りな文机の上にあったペーパーナイフで封書の封を切った。

 封筒の封蝋に捺されたシーリングスタンプの紋章がセナート帝国の筆頭魔道士団である、ラブリュス魔道士団のシンボルとして用いられる「両刃斧」であることに気付いたカイトは一瞬だけ手を止めたが「今は中身が先だ」と、封を切った封筒から一枚だけの便箋を取り出した。

〈手紙で悪い。おまえにとっては実の父親ってことになる大樹だ。ただ、五歳の時にいなくなった男を父親だと思えなんて言う気はない。それと、すまんが今回の面会の申し出は断った。俺はミズガルズに戻る気がない。まあ、その理由は次の機会に会ったときにでも。俺は今この世界を愉しんでる。おまえもどうせ来たんなら、この世界を愉しめ〉

 頭語と結語といった手紙の書式は無視して、口語のままの日本語で走り書きされた短い文面をすぐに読み終えたカイトは、しばらく父親が記した「おまえ」という字を眺めた。

 何の迷いもなく走り書きしたようにしか見えない筆致の文面から、父親の本意を読み取ろうとしても徒労に終わると判断したカイトは、一枚だけの便箋を折りたたんで封筒に戻した。

 先日の夕食が済んだ際にセリカとステラの二人と打ち合わせていた予定の通りに行動することで、カイトは落ち着きを取り戻そうとした。

 迎賓館の中にある大きな食堂で約束の午前8時半に落ち合ったカイトとセリカ、ステラの三人は一緒に軽い朝食を済ませると、世界でも指折りの大都市であるセナート帝国の帝都・マスクヴァを散策するために迎賓館を出た。

 迎賓館の職員が馬車を手配しようとするのを丁重に断ったカイトは、セリカとステラとのたわいもない会話を楽しみながら、帝都で最大の規模だと聞いたマーケットへと徒歩で向かった。

 カイトの目的は市井の人々に接することだった。

 冬晴れに恵まれたマスクヴァの街を三十分ほど歩いて到着した、月曜日のマーケットは明るい活気に満ちていた。

 カイトの目には百軒はありそうに見える帆布のアーケードの下に並んだ商店の店先には商品が溢れ、多種多様な品目を扱う各々の店で働く人々の顔には笑顔があった。

「賑やかですね。気持ちのいい市場に見えます」

 マーケットの様子を見たステラは、朗らかな笑みを浮かべて素直な感想を口にした。

「そうですね……」

 こくりと軽くうなずいて応じたカイトが静かに答えると、ステラがカイトの顔を覗き込んだ。

「どうかしましたか?」

「いや……これで、確信できちゃった、というか……」

「確信できちゃった、ですか?」

 カイトの含んだ言い方に反応したステラがオウム返しに訊くと、カイトは視線をマーケットを行き交う人々に向けたまま答えた。

「ヴォストークやオムスクでも感じたんですが、セナート帝国の街には生きてる彩りみたいなものを感じます。魔道士でありながら帝位を簒奪して、徹底した実力主義と合理的な政策で国を覇権国家にまで拡大した皇帝シーマ。他国からは魔王なんて畏怖を込めた呼ばれ方をしている皇帝。でも、その魔王の国で暮らす人々には笑顔がある」

 カイトの言葉を聞いたステラは、視線をマーケットの光景へと戻した。

「……心中は複雑ですか」

 ステラが端的に訊くと、カイトは素直に打ち明けた。

「はい、複雑ですね。魔王は単純な悪であってくれたほうが、感情の整理はしやすかったです」

「そうかもしれませんね……」

 ステラは静かに同意を示した。

 カイトの視線の先では小さな子供たちが駆け回っていた。その光景は、どこか牧歌的ですらあった。

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